僕は兄弟と一緒だったあの時の事を時々思い出す。
ある時、少しの食べ物と水と寝るための毛布を与えられ、明かりのない狭い場所に閉じ込められた。何が起こっているのかわからないまま僕達は泣いた。
突然閉じ込められた狭い世界。それがどういうことかもわからずに震えながら肩を寄せあった。
与えられたものを食べ尽くすとだんだん力がでなくなり、涙で目は腫れて潰れたように開かなくなった。
力の入らない体を寄せ合い、お腹がすいたと泣く兄弟の体を撫でながら暖かい部屋と美味しい食べ物を思い浮かべた。
考える力も無くなって力が抜けてきた頃、突然部屋が明るくなり冷たい風とふわふわしたものが体に降りかかった。ふいに体が浮き運び出され、風呂に入れられ水を飲まされた。
捨てられたのだとわかったのは随分後のことだ。
「この桜はケイオウサクラっていうの。切ってからもゆっくり咲くことが出来る桜。あなた達を見つけたのは桜の木の下だったのよ」
僕を膝に乗せて桜の枝を見せるこの人が僕達を保護してくれた。あの時、僕達の体に降ってきたのは桜の花びららしい。
あれから何年経ったのかわからないけれど、他の兄弟も幸せに暮らしていると聞いて僕はまた目を閉じた。
[了]
むに
実際に猫を拾ったときのことを書いています。
私は本当にあったことしか書けないので。